人間社会主義

 20世紀はいろいろ形容されるが、資本主義に対する社会主義の時代でもあった。1917年のロシア革命を発端に、ロシアがソ連ソビエト社会主義共和国連邦)になる。その後、東ヨーロッパ諸国、中国、ベトナムキューバ…等々の国々が次々と社会主義化し、米国や西ヨーロッパ諸国、日本…などの資本主義陣営と対立した。

 だが、1991年にソ連が崩壊すると、東ヨーロッパの社会主義も次々と消滅。ソ連がロシアに戻り資本主義化すると、ヨーロッパ全土が資本主義に飲み込まれた。中国やベトナムも政治は共産党の指導体制だが、市場経済を取り入れ、実態は資本主義である。今現在、社会主義国と呼べるのはキューバくらいか(朝鮮民主主義人民共和国は特殊な独裁国家)。

 ソ連社会主義が失敗したのは、官僚支配の全体主義社会になったことが原因だ。自由で平等で民主主義を目指したはずの社会主義だったのに、まったく異質な世界に変貌してしまった。資本主義が生き残ったのは、社会主義諸国にくらべ、少なくとも自由と民主主義ではマシなところがあったからだ。

 資本主義が優位を保ったのは、なによりも社会主義的要素を取り入れ発展させたことが大きい。男女平等(女性の参政権)、社会保障、福祉制度など、そもそもは社会主義的思想が発展させたもの。20世紀の資本主義と社会主義を比較したとき、資本主義の方が遥かに柔軟で、社会主義は硬直して融通が利かなかった。

 しかし、20世紀の終末から21世紀にかけて、柔軟だった資本主義だが、タガが外れたように暴走。現在では市場原理優先の新自由主義がのさばり、グローバル企業が世界を支配しようとしている。あげくの果て、1%の富裕層と99%の貧困層に分断されそうである。このまま進めば、この先、人間同士の格差・差別の蔓延、自由と民主主義の後退、そして国境を越えて社会保障や福祉制度の崩壊が待っている。

 新しい社会主義が誕生しなければならないと思う。上からの全体主義社会主義ではなく、底辺からの民主主義的社会主義である。それを社会主義と呼んでいいのかどうか分からないが、問われるべきは制度よりも人間そのものである。「人間とは何か」をとことん突き詰めながら社会の制度設計をする必要がある。20世紀の社会主義全体主義化したのは、制度ばかりを優先させ、人間が不在だったからだ。