原発事故を風化させるな

 どんな事故も事件も時間の経過とともに人々の記憶から薄れてゆく。大地震と大津波、そして原発の大事故、想像を絶する3月11日の東日本大震災ですら、わずか半年で報道量は目に見えて減少してきた。

 地震津波などの自然災害は、行政の取り組みに不備があろうと必ず復旧・復興できるので、だから人々の気持ちが次第に風化してゆくのはしかたない。しかし、原因が解明されず、補償問題もうやむやで、さらに終息の見通しがまるで立たない大事故人災に関しては、人々の記憶から忘れるようなことがあっては決してならない。

 東京電力福島第一原子力発電所の大事故は、旧ソ連チェルノブイリ事故を超えて史上最悪になってしまった。いまだ原子炉内部の状況が把握できず、大気中や海中に出た放射性物質の量は天文学的数字を示し、事故状況は終わりなき現在進行形である。

 日本のみならず世界中への悪影響が計り知れない原発事故。にもかかわらず、NHKや民放テレビ局、朝日・毎日・読売・産経の大新聞から地方紙に至るまで、今やマスコミは原発事故を過去形のように扱い、原発再稼働への道筋をつけるかのような体制だ。一方、インターネットでは19日の「さようなら原発 5万人大集会」を生放送したサイトがあるように、事故当初から現在まで一貫して姿勢を変えず、あくまで事実を追及しようとするフリーの報道が目につくのでまだ救われる。

 東京電力は、黒塗りの事故対策手順書を平然と公表しながら電気料金値上げを画策している。そんな厚顔無恥な会社を政府はなんと私たちの税金で救済するらしい。電力会社がバラまくカネで操られてきた政治家やマスコミ。そんな彼らが主導する原発事故関連の報道は信用できるはずがない。

 ところで日本は昔から、北方領土竹島尖閣諸島などの領土問題を抱えているが、原発推進という自民党時代からの国策のせいで今や福島県の一部を「死の土地」として完全に失ってしまった。これほど深刻な領土問題があるだろうか。

 それにしても、こんな誤った国策に対してなぜか右翼団体の多数は黙っている。良心的右翼は反原発を訴えているようだが一部に過ぎない。自ら国土を喪失させた政・官・財に対し、全国の右翼団体は結集して「フクシマを返せ!」と街宣車を電力会社や国会へと繰り出すべきだ。