アートプロジェクトと青空文庫

 インターネットは数々の不可能を可能にしてきた。遠く離れた大勢の見知らぬ者同士が意志疎通できるようになり、そして手が届かなかったこれまでの知的領域を共有財産として誰もが利用できるようになった。

 数え上げればキリがないが、不可能を可能にした代表的な例として、グーグルが提供する「アートプロジェクト」と、日本の「青空文庫」を取り上げたい。

 私は美術鑑賞が大好きだが、しかし実際には世界の美術館巡りなど滅多にできるものではなく、それができたらどんなに嬉しいだろう。そんな夢を叶えてくれそうなのがグーグルのアートプロジェクトだ。今のところまだ17の美術館だけだが、それでも誰もが知っている有名な絵画を含めて1000以上の作品が鑑賞できる。色が鮮やかなだけでなく、拡大もできるし、解説機能も付いて、これは本当に驚きである。

 グーグルは「人類が使うすべての情報を集め整理する」ことを目指しているらしく、アートプロジェクトはそれらの一環なのだろう。中でも人類の知的財産を世界中の人々に提供しようとするグーグルの試みに私は賛同する。ただし、そんな大事業をグーグルという私企業に任せていいのかという問題はあるが・・・。それはともかく芸術を特定の人たちの占有物にしてはならない。

 青空文庫も素晴らしい。著作権が消滅した古い作品がほとんどとはいえ、そこに収納されている量は半端ではなく、実際に書籍として揃えようとしたら一人の人間の力だけではとても無理だ。それがパソコン一台あれば自在に作品を選んで好きなだけ読めるのだから本当にありがたい。時間とともに作品の数も増加中で益々楽しみである。

 現行の50年から70年へと著作権を延長する動きに対して青空文庫は明確に反対しており、私もこれを支持する。極論すれば著作権はない方がいい。とはいえ、いきなり撤廃することは無理だろうから少なくとも短縮を目指すべきだ。ボランティアで青空文庫に携わる関係者の方々には敬意を表したい。

 繰り返すが、人類の知的財産は世界中の人々が平等に享受されるべきで、そのためのコンピューターやインターネットでなければならない。「電子美術館」や「電子図書館」だけでなく、さらなる進化と発展を期待する。