日が暮れて 朝がくるまで

 夕暮れになり、一人で川べりを歩くときなど、周りに私以外はだれもいなくて、ただ遠くの方に町の灯りが小さく見えるだけのようなとき、つくづく私はたったひとりぼっちであることを実感する。

 太陽が地平に沈み、いよいよ辺りが暗くなるにしたがい私の孤独感はどんどん深まる。そして、この世界に人間は私だけであるかのように思えてくる。私は最後の人間であり、私はこの世の果てに存在するかのようである。

 遠くに見える町の灯りは、もうずっと前に滅びた人類の文明の残像のようだ。そんな微かな灯りを背にしながら私は漆黒の中へと吸い込まれてゆく・・・

 闇がすべてを包み込み、音も消え、時間も忘れる。

 どれほど経過しただろう。奥深くからそっと姿を現す者がいる。だが、それは私ではない。その何者かは暗闇のさまよい人だ。やがて小さな灯りを見つける。ようやく見つけた微かな灯りに安堵するが、しかし、その灯りはかつて栄華を極めた文明の残り滓にすぎなかった。

 何者かは小さな灯りを大事にするが、いずれそれも消えるであろうことを覚悟した。何者かは火を熾す術を知らないのだ。

 小さな灯りも消えかかろうとしたそのときだ。どこか彼方からほのかな光が見えてくる。それは朝焼けであった。何者かにとって初めて見る自然の光なのだった。