反面教師から学ぶ

 女性蔑視発言で形だけ反省したように繕った(全然反省してない)東京オリ・パラ組織委員会森喜朗会長が、とうとう辞任に追い込まれえた。それにしても、東京オリ・パラ組織委員会の現状は、呆れるというか、情けないというか…。

 一時、森喜朗の後を川淵三郎が継ぐ予定に。森氏83歳、川淵氏84歳、爺さんからさらに爺さんへ。お互い早稲田出身、気心知れた仲らしく、「川淵さんしかいない」と言って辞任する森氏が指名したというが、これだと本質はちっとも変わらないことを内外に証明したことから、批判が続出。一夜にして白紙。国内外に恥を上塗りすることになる。

 問題発言した森氏が指名するのはおかしいとか、密室での決定は不透明とか、実際、川淵氏が後を継ぐのはどこから見ても納得できないわけで、一連のドタバタは日本の隅々にまで侵食する森喜朗的状況を浮き彫りにしたわけだ。

 とりあえず、今週中には新会長が決まるらしい。なるべく若い人を、できれば女性を登用すべきだろう。それにしても、なぜ過去のスポーツの実績にばかりこだわるのか。むしろスポーツの世界から距離がある人の方が適任ではないのか。

 東京オリ・パラ開催の是非は別として、組織論から言えば、先輩・後輩や利害関係のない人の方が冷静に対処・運営できる。日本のジェンダー意識が問われ、男女同権が叫ばれる時世では、例えば、上野千鶴子氏や田中優子氏のような人物こそが選任されていい。

 森喜朗という人物は、世間に対し口先では穏やかな態度を見せるが、権威を奮い、支配したがり、周りを黙らせる。これが実態で、謝罪から程遠く開き直りの自己弁護会見を見れば明らか。本当に、こんな年寄りにはなりたくないとつくづく思う。

 物事の改善は、深刻な問題が生じてから図ることができる。ならば、東京オリ・パラ会長の森喜朗は反面教師の大きな証明だ。ジェンダー意識がほとんど希薄な従来の古臭い体質を、森喜朗が具体的に体現してくれたことで、日本社会は反森喜朗的方向へと前進の一歩を大きく踏み出せるかもしれない。

 森喜朗の問題もさることながら、組織と個人の問題がより深刻、政治団体、企業、労働組合から、末端の町内会、そして家庭に至るまで、そして私を含めた一人ひとりの人間の未熟な精神構造にまで、問題の根が蔓延る。それをどうやって払拭するのか、より健全な人間社会へ発展できるのか、常に問われることになった。