公共放送は重要だが…

 先の参議院選挙では泡沫扱いされていた「NHKから国民を守る党」が躍進し、議席を獲得するまでに至った。党首の立花孝志という人はNHKスクランブル化を目指している。右翼的なこの政党を私はまったく好きになれないが、少なくともNHKのあり方に問題提起したことは紛れもない事実である。

 立花孝志氏の訴えるスクランブル化とは、受診契約した人だけがテレビを視聴できるシステムで、確かにこれは単純明快で分かりやすい。しかしNHKや政府はこれでは公共性が失われるとして拒絶する。現在のNHKの報道姿勢や安倍政権のデタラメさとは別に、私も公共放送は重要だと考える。

 「NHKから国民を守る党」はかなりどころか相当怪しく、右翼的で支離滅裂な面々が揃うこんな政党を支持するわけにはいかない。しかしスクランブル化を提唱しNHKを批判することで、普段からNHKに不審を抱いていた左翼・リベラル的な人々の一部が共感を寄せている事実は否定できない。NHKを批判する一点において、意外にもある程度の支持を得ている。

 繰り返すが私はNHKスクランブル化には反対である。もしそれが実現したらNHKの公共的な使命は終わるし、国鉄や郵便が民営化されたようにNHKも民営事業に変貌することは間違いない。「NHKから国民を守る」と言いながらスクランブル化を提唱し、公共的な存在を目の敵にするところがいかにも右翼的で、くれぐれも騙されないようにしたい。スクランブル化することで受信契約しなくても見放題の輩が大勢出てくる可能性もあり、不公平がより拡大する恐れもある。

 NHKを嫌う人たちの多くが現在の安倍政権寄りの報道姿勢を批判し、民放と代わり映えしない「くだらない」バラエティ番組が多過ぎるという理由などから受診料を拒否するが、私もその気持ちは本当によく分かるし、拒否したがるのは当然だと思う。また、NHKの会長や経営委員の面々がいつのまにか一方的に決められ、「みなさまのNHK」の皆様からの意見がまったく反映されない現状は大問題だ。

 とはいえ、私はNHKの受診料は払ってもいいと思っている、ただし視聴した分だけ。当たり前だが、視聴してなければ払う必要などない。前回の記事でも書いた通り、NHKには公平を目指すまともな公共事業を展開してもらいたいのである。視聴者は良質な番組ならば見るし、つまらなければ見ない。受信できる装置を持っているだけで同一料金を徴収するのはあまりに一方的、かつ不公平、だから私は現状の受信料を拒否する。