日本の逆転現象

 新型コロナ感染で亡くなった人が5000人を超えた。インフルエンザ流行がほとんどない状況下、この数は欧米に比べて少ないが、やはり深刻だ。新型コロナと認定されずに死亡した人もいるだろうから、実態はもっと多いかもしれない。

 うがい、手洗い、マスクが必須となり社会全般にすっかり定着したが、振り返れば私の子供の頃にそんなものはほとんどしたことがなく、今から思うと、よくもあんな汚い生活を送りながら平気でいられたものだと感心する。しかし子供の頃のそんな日常こそが、逆に私の免疫力を強くしたと思っている。

 日本で清潔志向は随分前から社会に浸透してきたが、子供時代は泥んこ遊びをどんどんした方が断然いい。大切に育てたいとの気持ちが強過ぎて、子供を無菌状況のような環境に置くとかえってダメになるのは説明するまでもない。

 免疫力を蓄えるには川遊びや土にまみれた方がいいのだ。とはいえ年を取ってからわざわざ泥んこ遊びをする必要はなく、それはあくまで若い頃にすればいいのであって、年配者はやはりなるべく清潔な毎日を送るよう心掛けるべき。

 ところが日本では逆転現象が見られる。幼い時から清潔志向に走ることで免疫力がつかず、結果、壮年になって気力も体力も不十分なため、ちょっとしたことで挫折、セルフネグレクトに陥りやすくなるのだ。

 やる気が失せると、部屋の中は次第に雑然として荒れ放題となり、どんどん不衛生な状況に陥り、そうして益々体力が衰え、下手すればゴミの山に埋もれ孤独死…なんてことにもなりかねない。じつはこれは今現在、日本の重大で深刻な社会現象の一つではないか。

 薬は口にしないし適度に運動もして、体力に多少の自信を持ってる私だが、しかしこの先どうなるか分からず、体調には十分気をつけなければならないと自覚している。それにしても、塾、ゲーム、スマホ…それらに依存する子供たちの将来はどうなるのか。地震や台風と同様、感染症の流行もかならず繰り返す。