陰謀論にハマりやすい人

 狂ったトランプ支持者たちが米国の連邦議会議事堂へ乱入、暴れて占拠した事件は米国の民主主義の終わりを予感させ衝撃的だったが、これは決して突発的な偶然の出来事ではなかったと思う。

 実際、米国では進化論より創造論天地創造説)を信じる人々が昔からとても多く、なんと全国民の半数以上がそれに当てはまるという記事をかつて読んだことがある(そもそも学校で進化論を教えないし、教えることを禁止してるところが多いらしい)。超保守的なキリスト教原理主義の岩盤はぶ厚く、彼らの大部分がトランプ大統領を強固に支えていた。

 「Qアノン」のようなバカバカしい陰謀論が、なぜいとも簡単に米国全土に拡散拡大したのか。自ら考えようとせず創造論を信じる大勢の人々の存在が、自分たちにとって気に食わないものを排除したがる土壌を作り出す要因なのだろう、なんとなく分かる。まさにトランプ教という名のカルトだ。

 陰謀論に陥りやすいのは、上記のような世の動きに流されるままの人々だけじゃなく、意外にもそれなりに知識を蓄えた人々の中にも大勢いる。なぜなら彼らは「自分だけは特別」との意識を常に抱きつつ、独自の視点から社会の動向を眺め分析したがるからである。

 「独自の視点」は本人の個性を示す証明になるかもしれないが、それが極端になると、その優越性が暴走し、すなわち「私だけが真実を知っており、他は何も知らない愚か者」となりかねない。他者と同じことをしたくない、同じ考えでいたくない、これはむしろ健全な姿勢かもしれないが、同時に一般的な常識を忘れてしまっては困る。

 人はそれなりに知識を蓄えると、それを過信するあまり、自分が否定されたり、間違いを指摘されたりすることを極端に嫌い、それに耐えられなくなる。一旦陰謀論にハマるとなかなか抜け出せなくなるのはそのせいだ。

 確かに、陰謀論には興味深い一面があるとはいえ、一定の距離を常に保ちつつ対処すべき。そもそも陰謀が働いているかどうかは他人の書いた文章だけから判断すべきではないし、ましてやSNS上の噂を鵜呑みにするのは論外。物理学の理論は数多くの実験において検証され、初めて成立するように、実際の事実関係を蔑ろにするのは禁物だ。