哀れな野良猫

 昨日、陽も暮れて真っ暗な夕刻時、いつものようにスーパーへ買い物に行く途中の道端、ミヤォーミヤォーとの鳴き声が。振り見ると、残雪に囲まれた低いコンクリート塀の上で一匹の茶色の子猫が背を丸め震えていた。明らかに野良猫だ。

 急いでいたのでそのまま立ち去ろうとしたが、か細い鳴き声が気になり傍まで行って身体を撫でてあげるつもりで引き返す。しかし、警戒心が強い子猫は私が近づくとサッと立ち上がり逃げてしまった。

 本格的な冬はこれからだ。野良の子猫はますます寒くなるこの季節、生き伸びることができるかな。犬と違い、雪の中、冷たい外気にさらされる一匹の子猫はなんとも哀れで心が痛む。多くの飼い猫ならこの時、暖かい部屋の中、コタツの上で同じように背を丸めながら気持ち良く熟睡していることだろう。

 厳しい境遇は猫だけじゃなく、多くの人々にこそ当てはまる。一部の大企業と富裕層のみが恩恵を預かるアベノミクスで、現実にはその経済理論のトリクルダウンというおこぼれすら手に入らない大勢の貧困層がどんどん増加している。

 もともと光を当たてていた場所なのに、もっと強く光を照射するばかり。その挙句、闇の領域が拡大しつつ、さらに闇から広大な漆黒へと移り変わるのが現状だ。

 今度の総選挙、各党の公約を聞いても、自民党から共産党まで、つまるところ経済成長を基盤に置いての主張であることには変わりなく、その手法の違いを争っているだけのよう。口が裂けても「日本は衰退する」との本音は言えない。しかし、政治家から有権者まで、じつはほとんどの人が気づいている。誰もが成長という幻想にすがりたいだけ。

 1億2500万人の人口が8000万人に減れば、自ずとどうなるか誰でも想像できる。8000万の人口でさらなる経済成長という数字の上乗せを目指すのは土台無理。私は8000万人でも日本の人口は多いと思う。この国土で5000万人位が妥当ではないか。

 現状より2/5の人口で、周囲には豊かな自然、ゆとりある空間に満たされ、おおらかな時間が流れる、それらが調和する社会で暮らせることを皆で模索すべきだ。人々だけじゃなく、野良猫が元気に遊び回れる世界の方が健全じゃないだろうか。