安倍晋三がリベラルから評価される日

 小泉純一郎は2001年〜2006年まで日本の総理大臣を務めたが、しかしその5年間で竹中平蔵たちと日本の社会構造を根底から破壊しつくした。総理の在任中、左翼・リベラル陣営は小泉純一郎に対し厳しい批判をつづけた。ところが、東電福島第一原発事故を契機に小泉純一郎脱原発へ舵を切ると、過去の新自由主義の悪弊やイラク戦争加担には目をつぶり、「脱原発」だけで左翼・リベラルの多くが政界引退後とはいえ小泉純一郎を支援するようになる。

 ところで現在の総理大臣・安倍晋三だが、左翼・リベラル陣営は彼を戦後最悪と見なす。改憲を旗印に、特定秘密保護法原発再稼働、そして集団的自衛権への取り組みを見れば安倍晋三に「最悪」のレッテルが貼られても仕方ない。だがしかし、安倍晋三が左翼・リベラルから好意的に評価される日が、近い将来ひょっとして訪れるかもしれない。そんなバカな! と思われるかもしれないが大いにありうる。

 このまま時代の流れを受け入れるなら、本当に「日本の戦争」が現実味を帯びてくる。安倍晋三がどこまで踏み外すか分からないが、実際に改憲を実現し、周辺諸国と一触即発の危機的状況を招いたとしても、運良く戦争にまで至らなかったとしたら、後々彼は「戦争をしなかった首相」として高く? 評価されるかもしれないのだ。

 日本をガタガタにした小泉純一郎元総理だったのに、少なくとも彼は憲法には触らなかった。靖国神社に参拝したり、社会を市場原理主義に染めたり、日本を米国の飼い犬に貶めたりしたにもかかわらず、結果として日本国憲法の文言だけは守り、しかもその後、脱原発へと向かう。それこそ小泉純一郎が評価される所以というわけだ。

 安倍晋三小泉純一郎以上に日本をムチャクチャにしようと戦争だけは起こさなかったとしたら、実際に戦争を起こした総理大臣よりも好意的に評価されることは間違いない。安倍晋三の次の次くらいの総理大臣が、本当に戦争を引き起こすかもしれないのだから。

 あくまで比較論に過ぎない。とはいえ、こうして評判の悪かった人物が時間とともに再評価されてゆく(例えば田中角栄)。しかし冷静に考えれば、なんとも妙でおかしく、とてつもなく危険な流れではないか。もし、安倍晋三が左翼・リベラルから評価される日が訪れるとしたら、それこそ日本はオダブツの日を迎えたことになるだろう。