日本は衰退し、弱体してもいい

 専門家や知識人に限らず、私のような無名の門外漢ですら日本の将来を考えれば、確実に衰退し、弱体してゆくことが予想できる。少子高齢化や財政難の現状から大勢の人々が同様な思いを抱いているに違いない。だからこそ、どのような対処をすべきかが問われる。

 衰退と弱体をなんとかストップさせ、再び経済大国を目指し、それどころか軍事強国となり世界に君臨したい、と思いたがる人々がいる。一方、衰退と弱体は歴史の流れで当然のこと、世界の平準化とともに各国々や各地域が公平になるなら、それは歓迎すべきこと、と受け止める人々も数は少ないがいるだろう。

 私は後者だ。公平な世界が実現するなら、日本の国力が衰退し、弱体しても構わない。もちろん、皆が飢えて明日の生活もままならぬ、という状況を望んでいるわけではない。贅沢はしなくとも、健康で仕事もほどほど、誰もが余暇をそれなりに楽しめ、社会保障が整うことが最低条件である。皆が東京田園調布のような高級住宅街に暮らすことを目指す必要はまったくない。

 今度の総選挙で結果がどうなるか分からないが(だいたい予想は付くけれど)、右翼でも左翼でも、リベラルでも中道でも、どの勢力が政権を握ろうと、日本が衰退し、弱体する現状に歯止めを掛けることはできないはずだ。

 リベラル・中道、あるいは左翼政権がかりに誕生しても、衰退と弱体は確実に進行する(それを嫌がる大衆の意思が右翼回帰の原因ともなる)。最も困るのは、極右政権が誕生し、新自由主義と軍事増強で日本が北朝鮮朝鮮民主主義人民共和国)のようになる可能性が非常に高くなること。力を誇示したがることで現状が益々困窮し、衰退と弱体が加速すれば大勢の人々の明日がまったく保障されなくなる。

 ゆるやかに衰退し、弱体していい、と自覚することが肝心ではないだろうか。一部の特権階級が富を独占・支配し、表向きは力を誇示して大多数の人民が貧困と飢えと病気で苦しむ社会がいいのか。それとも、国力は落ちても格差が縮小され多くの人々が恊働・協力・共有できる社会がいいのか。

 日本だけが衰退し、弱体するのではなく、ヨーロッパも米国も没落する。21世紀から22世紀にかけて、世界の力関係はガラリと変わる。東南アジアや中東や中南米、そしてアフリカの国々や地域が力を増すのは当然であり、その時、おそらく世界の不均衡は今よりも改善され、もっとバランスが良くなるだろう。地球全体のため、それは大変良いことなのだ。