領土問題を考える

 日本の周囲だけでも、ロシアと関わる千島列島、韓国に実行支配されている竹島、そして中国と台湾が注視する沖縄の尖閣諸島、それら領土問題が横たわる。中でも北方四島は明確に日本の領土だが、しかしロシアは返還するどころか自分の領土だとして頑なである。韓国も中国も台湾もそれぞれの領域では同様な姿勢だ。

 世界中の至る所で領土問題は存在するが、パレスチナ以外で私が昔から強く関心を抱く場所としてインドとパキスタンにまたがるカシミール地域がある。地図を見ても国境線は曖昧で点線になったまま。インドもパキスタンも長いあいだ睨みあいをつづけ(中国も絡んで)、共に譲り合う気配は毛頭ない。あげくは両国とも軍備を増強して一触即発の緊張関係に陥ってしまった。

 韓国と北朝鮮朝鮮民主主義人民共和国)に匹敵するほどインドとパキスタンの関係は危うく、両国とも核兵器を所有するまでに至ったのは最悪である。ロシアや中国だけでなく、もし日本や韓国までもが核兵器を所有すれば、かろうじて維持されてきた東アジアの安定は一気に崩壊するだろう。

 歴史がそれぞれ違うのだから、お互い自国の領土を譲り合うようなキレイ事は難しい。特に日本と韓国、そして日本と中国のような、過去において侵略した側とされた側という逆の関係では対等に向き合えず、譲り合う精神の発揮などほとんど不可能に近い。

 自分の物を無条件に譲る必要はないが、しかし相手の物を無理やり奪うことは断じて許されない。ではどうすればいいのかといえば、「これは私の物だが同時にあなたの物でもある」という両所有の意識を広めて臨むしかない。

 土地にも海洋にも資源が眠っているので領土問題が浮かび上がる。グローバルな時代を迎え食糧やエネルギー問題が深刻になり経済の活性化を促したいなら、微妙な領域においては「私の物であると同時にあなたの物でもある」との共通認識に立ち共同開発しながら発展を目指すしかないだろう。そしてお互いの人々が自由に往来できるようになればいい。やがてはそんな動きが拡大して国境線など消滅すればもっといい。

 以上はまるで夢物語のようだが、決して不可能ではないはずだ。大局的に見れば「大陸移動説」を持ち出すまでもなく世界地図はやがて大きく変貌する。「自分の領土」なんて、じつにちっぽけな意識だと思わずにはいられなくなる・・・。