曇天の切れ目から

 北陸金沢の冬は、雨や霙、霰や雪の繰り返しである。曇天つづきの空模様だが、それでも時折、雲の切れ目から澄み切った上空を覗ける。短い晴れ間だからこそ、それが夜の時間帯だと星々の輝きがひときわ美しい。

 この季節の夕暮れ時、西の空では金星が眩しいほどに明るく、南の上空高くに月が浮かび、そして東寄りには木星が煌々と光る。金星と月と木星を同時に眺められるとは、なんて素敵なことだろう。凍えるほど冷たい空気。だが遠くからの星の便りを味わえるなら寒さなどいくらでも我慢できる。

 しばらくすると、西の地平から真っ黒な雲が押し寄せ、瞬く間に澄み切った上空を覆い尽くす。星々の神秘も遮断して、ふたたび雨や雪の到来である。
 
 今年の冬はどうなるだろうか。12月下旬の数日続いた寒波で辺り一面雪化粧となったが、大晦日までにほとんどが溶けて、雪なしと言ってもいいほどの正月を迎えた。私が子供の頃の冬とは印象がまるで違う。雪の量は少なく、ツララを見ることも滅多にない。

 明らかに地球温暖化の影響だと思う。今現在、地球は氷河期に入りつつあると主張する科学者もいるが、ただ近代から現代へと私たち人類は人工的に地球を暖めてきたことだけは確かだ。近年、雪の量が減ったとはいえ、それでもときおりドカ雪に見舞われるから要注意。地球そのものは全体のバランスをなんとか保とうとする。だから、寒さ暑さなど自然現象が一方に偏った時、その反動が恐い。

 曇天がつづくと外に出るのが億劫になる。部屋に閉じ籠もってばかりいるのは健康に悪い。日中、雲の切れ目を見計らって外出してみると、遠くビルの谷間から名前の通り真っ白になった白山を眺めることができた。夜の星々と同様、白山にも見惚れてしまう。