もっとも不思議な謎

 11月に入り、今年も残り二ヶ月。これからあっという間に年の瀬となり、そしてまた新年を迎える。いつも同じ言を繰り返すが、本当に時間の経つのが早く、年を取ったせいでそれは益々スピードアップしてきている。

 ちょうど今、晴れた夜には北東の空には満月が、すぐ傍には火星が赤く煌々と輝く。南西に目を移せば木星土星が接近し、中でもひときわ木星の白い輝きが目立つ。北の空ではカシオペア座が見えるし、そのW印を基に北極星を探すのは簡単だ。こうして星が輝く夜空を見上げながら、つくづく想う。

 世の中には常にいろんな問題が山積し、たとえそれらが少しずつ解決されたとしても、また新たな問題が必ず生じ、私たちは安堵してる暇などない。人類が生存し続ける限り、この呪縛から逃れることはできないだろう。

 人々は不安を抱き、人々は危険を察知し、だからいつも悩んだり苦しんだりして常に苛まれるが、では、その根本的原因はそもそも何だろうか。突き詰めてゆくと、それは自分の存在そのものに集約してゆく…。

 この世でもっとも不思議な謎とは何かを問うなら、それは大宇宙の神秘とともに「自分の存在」ではないだろうか。なぜ私なのか? 数多くの人々の中から、なぜ私だけが直接痛みを感じ、自分を意識できるよう選ばれてしまったのか? この事実ほど不思議な謎はなく、ここに全てが起因してるような気がしてならない。

 私は暗い上空を眺め遥か遠い宇宙の深淵を覗くが、じつはそのことは自分の足元を、一番近い場所を、すなわち「自分の存在」を探ろうとして覗いているのかもしれない。

 秋も深まり、玄関先の南天の樹の実がだんだん色付き、少しずつ冬の到来を告げてくれてる。その赤い実、今度の冬も小鳥たちが飛来し啄んでくれるだろうか。いつの間にかトカゲのカナヘビの姿が見えなくなり、ちょっと寂しい。そういえばいつも頭を撫でてた近所の白猫、最近姿が見えないがどうしたのかな。

 不思議だ。なぜ私は人間で、トカゲや猫ではないのだろう?