消費税を問う

 2011年も過ぎ去ろうとしている。毎年いろんな事が起きるので話題は尽きないが、今年ほど大きな問題が幾つも山積し来年へ持ち越される年も珍しいかもしれない。大地震、大津波原発事故、台風豪雨、普天間、財政危機、TPP・・・とキリがない。年末は消費税の問題で政界が大揺れだ。

 消費税は今に始まったわけではないし、財政危機を穴埋めする手段としてもっとも安易な増税策ということで話題になりやすい。

 ところで、消費税の本質を本当に理解している人は果たしてどれほどいるだろうか。現状5%の消費税を私たち一人ひとりが平等に払っていると思ったら大間違いである。

 3%の消費税が初めて導入されてからしばらく、私たちはスーパーなどで買い物をしたとき実際の価格に対し消費税を上乗せして金額を払っていた。980円の品物の場合それは1010円になるのだった。1000円札を出して20円のお釣りが来ると思ったら、さらにまた小銭を用意しなければならず、つまり外税として私たちは常に消費税を払っている実感を抱くことができた。ところが、いつの間にか消費税は内税となり980円の品物は消費税込み価格で同じ980円の値札が付くようになった。

 この「消費税込み価格」というのがとてつもなく怪しい。今現在5%の消費税だから980円の品物では45円の消費税が含まれており、実際の値段は935円である。もし外税なら980円の品物は1030円になるはずだ。1030円と935円では100円ほども違いがある。この100円の差額をいったい誰が負担しているのか?

 大企業は下請けの中小零細企業にコストダウンを要求することで消費税分を軽減しようと懸命になる。消費税負担のしわ寄せをもっとも大きく受けるのは、大多数の勤労者が働く、まさに社会を支えているはずの中小零細企業、及び自営業者なのである。

 さて、消費税込み価格、すなわち内税になって私たち消費者は消費税を払っているという実感があるだろうか。同じ980円のまま据え置きだから、消費税込み価格の方がむしろありがたく思い、本当は消費税への意識が薄れてしまったのではないだろうか。

 消費税に詳しい斎藤貴男氏の著作を詳しく読んだわけではないが、斎藤氏の発言をちょっと聞くだけでも消費税のカラクリが何となく分かる。税金については素人の私でさえ、現状の消費税について考えると疑問府?が付く。

 大多数の消費者とは、じつは中小零細企業や自営業の勤労者であることを忘れてはならない。消費税が10%になれば中小零細企業や自営業の負担は益々増大し、今よりもさらに多くの企業が倒産したり、多くの店がシャッターを下ろすかもしれない。中小零細企業や自営業が崩壊すれば日本という国そのものが崩壊する。