諸問題の本質

 日本を含む太平洋周辺11カ国(米国を除く)によるTPPが、昨日12月30日から発効された。TPPに賛成か反対か、と問われるなら、公平なTPPには賛成だが、不公平な格差を産むTPPには反対、である。

 TPPに限らず、世界はグローバル化が進み、良くも悪くもひとつになりつつある。「世界がひとつになる」ことに賛成か反対かと問われるなら、みんな自由で平等を目指すひとつの世界なら賛成、もし大企業が、もし超大国が、もし少人数の為政者達が…威張り支配するような世界統一には絶対反対、である。

 言葉の表面だけを見て判断するわけにはいかない。内容を吟味すること、どの方向を目指しているのかを確かめなければ。全体が刑務所のような世界になるか。それとも解放し開放され、人間が個人として無限の可能性を発揮できるような世界になるか。

 ところで「Me too」運動の広がりで過去の不祥事が暴露されつつあるが、まさかあの人が? と我が目を疑いたくなる事実も発覚し、報道写真家の広河隆一氏セクハラ疑惑もそのひとつ。これには本当にガッカリした。

 「私の魅力に惹かれて彼女たちは身を寄せた…」という広河氏の言い訳はうぬぼれも甚だしく、人間として最も醜悪な言動で自らの恥を晒した。世間的な評価で仕事のできる人が、イコール善人ではないことを改めて知る。

 広河隆一氏のセクハラ問題はいろいろ考えさせられる。じつはこの人、かつて東京は新宿歌舞伎町の私が経営するBarに来たことがあった。若い女性スタッフを何人も従わせていたが、当時から既に彼女たちは深刻なセクハラ被害に遭っていたのかもしれないと思うと今更ながら胸が痛む。

 広河氏のちょっとした言動に私は傲慢な印象を抱き、そして私はこんな人と一緒に仕事はしたくないと思った。右にも左にも、保守にもリベラルにも、セクハラは付いて回るが、これは思想信条とはまったく別問題だろう。

 TPPのような世界的な経済問題から、個人的なセクハラ問題まで、要は「強者と弱者の関係性」こそが問われなければならないと痛感する。己の弱さを自覚しつつ、社会的弱者に寄り添ってこそ、国が、地域が、一人ひとりが発展してゆく。強がり威厳を振りかざすようなら新たな未来は拓けるはずがなく、それは人間社会を分断させる実に矮小な姿勢だ。