世界的な傾向

 イギリスの国民投票EUからの離脱派が勝利した。その結果、イギリス本国、並びにヨーロッパだけでなく、日本を含めしばらく世界は相当混乱するかもしれない。始めはそれほどで感じないかもしれないが、混乱は徐々に深刻さを増し、経済・金融の領域だけでなく、ヨーロッパ各地ではEUからの離脱運動が活発になるのは間違いない。

 EUからの離脱でイギリスは完全に没落し、現代史からイギリスは世界の片隅に追いやられる。かつての「大英帝国の栄光」を求め離脱を支持した内向きの勢力が、結果として「大英帝国の没落」に自ら拍車を加えてしまった。

 それにしても、離脱を支持した人々はあまりに短絡的、近視眼的で、これまで物事について深く考えることをしてこなかったに違いない。「自分さえ良ければ」の意識が強過ぎ、利己主義の典型だ。こんな輩はどこにでもいて、かつての「大日本帝國」の復活を夢見る安倍政権が続くなら日本の没落も時間の問題だろう。

 あの小さなイギリスでさえ今回のEU離脱でハッキリ分断された。スコットランド北アイルランドは残留で、イングランドウェールズは離脱、イングランドでも首都ロンドンは残留希望がはるかに多かったらしい。

 世代間や年収の高低でもハッキリ分かれた。若年層と生活に余裕のある世代は残留で、高齢者と労働者層は離脱。これはいったい何を意味するかと言えば、「未来に希望を託し、知識を求めようとする人々」は開放的で、言葉は悪いが「昔を懐かしみ、教養がない人々」が自らの周囲に壁を作ってしまったということ。

 一人ひとりの大衆はもっと賢くならなければならないが、毎日の生活に追われると勉学する余裕など持てなくなる。権力者の本音は大衆が賢くなっては困るので、大衆をギリギリの生活に追い込みながら、選挙になると分かりやすい言葉で大衆の感情に訴えかけ支持を得ようとする。じつに単純な構造だ。

 これはイギリスだけの問題ではなく全世界的な傾向で、アメリカのトランプや、日本の安倍晋三橋下徹、ヨーロッパ各国の極右勢力など本当によく似ている。人々の無知に付け込み大衆操作したがるところはソックリである。

 考えることを面倒臭がり、目先の利益にしか関心を抱かないと、人はすぐ周囲に壁を作りたがるが、それは自らを滅ぼす行為であることを肝に銘じなければ。私たちは思考停止にならないよう十分注意したい。