日本の三大悪組織

 カフカという小説家に「城」という有名な作品がある。初めて読んだとき私には退屈でぜんぜん面白くなかった。城に雇われた測量士Kのいつまで経っても城へ到達できない物語は、推理小説的な謎解きの要素に満ちているのではと期待していたが、実際の内容は、城の周辺にたむろする様々な人々の軋轢や無駄なおしゃべりが延々とつづくばかりであった。

 しかしその後、私のような典型的な庶民が日本の現状に暮らすうち、私をとりまく現実社会こそがカフカの「城」の内容そのものではないかと思えてきた。

 「城」とは、日本でいえば中央省庁そのものだ。じつは、私たち庶民は中央省庁で働く官僚の世界をまったく把握できていない。私たちにとって中央省庁とは謎に満ちた魑魅魍魎の世界であり、私たちは一歩も足を踏み入れることができず、ただ周辺をうろついて噂話に明け暮れている。

 政治家や企業が不祥事を起こすと批判されるが、それはまだ政治家や企業の表面だけでも私たちには見えているからだ。政治家や企業のトップの顔や名前などを知ってる人は多くとも、中央省庁で働く官僚の顔や名前を知ってる人はさすがに少ないだろう。

 中央省庁に勤める官僚たちにとって「日本という国家を存在たらしめ現実に動かしているのは自分たちだ」という強烈なエリート意識に裏打ちされているに違いなく、彼らにとって政治家や企業経営者など、自分たちの手のひらで弄ばれる存在に過ぎない。

 あまりに巨大で複雑な中央省庁という行政機関は、一個人にはとても手に負えない世界だが、それでも想像力を逞しくすると日本という社会の暗部が見えてくる。行政機関の中でも特に金融関係と治安関係が根幹を成しているようで、すなわちそれは銀行と警察である。

 霞ヶ関と銀行と警察、これが日本の三大悪組織ではないか、と私は勝手に想像してしまう。一方的に悪と決めつけて申し訳ないが、これらがもう少しまともな組織でいてくれたなら、日本はかなり自慢できる国になるかもしれないと本気で思う。

 以上の巨大組織の力に比べたら、どんなに威張って君臨しようと安倍晋三橋下徹石原慎太郎などは、あまりに小さな吹けば飛ぶような存在である。