なるほど、そういうことだったのか…

 ゲーム「Braid」のWorld2からWorld6までなんとか攻略してきた私は、いよいよ最終ステージのWorld1に挑むことに。行方不明だったプリンセスをWorld1でとうとう見つける。しかしプリンセスには手が届かない。ここまで来たからには、なんとしてもWorld1を攻略してプリンセスを救い出し、ゲームの全貌を把握しなければ気がすまない。

 何度試みても失敗ばかり。それにしてもWorld1はなんか変だ。World2〜World6までとは明らかに違和感がある。そもそも、なんで最後のステージがWorld1なのだろう。1から始まるのが普通じゃないのか。このゲームの特徴は時間を逆転できることにあり、主人公のティムが失敗したりピンチになったりしたとき、時間を戻して何度でもやり直しができる。

 努力は報われた。悪戦苦闘したが、ついにWorld1も制覇。そして驚くべき結末を知ってしまった。主人公ティムとプリンセスとの関係が、じつは…!?

 ゲームの特徴である「時間の逆転」の本当の意味がWorld1で明らかとなる。なぜWorld1が最後のステージなのかも分かる。そして、「Braid」というゲームの緻密に練り上げられた構成、そして寓話としての奥深さを知る。このゲームは表面的な小手先のパズル・アクションではないし、夢とロマンに満ちているわけでもない。

 アニメ作家の宮崎駿が『人というのは、自分が正しいことをやってると思っているのに、正しくなくなるんだよ。自分がちゃんとやってるつもりだったのが、いつの間にか、ねじ曲がったりするんだよ』と語っているが、似たような意味を発した人は古今東西多くいただろうし、現在を生きる私たちも日々の生活からそれらしきことは感じている。

 そうなのだ、善と思っていたものが悪に逆転することはよくあることなのだ。この「逆転」が20世紀から21世紀にかけて、そして22世紀に向かう時代の核心なのかもしれない。じつは、非常に今日的なテーマを扱っているのが「Braid」であり、優れた映画や文学作品に接して感じる魂の重さを、このゲームも提供してくれる。

 私はコンピュータゲームについてまったくのシロウトであるが、「Braid」はゲーム史に残る傑作ではないかと思う。「Braid」の世界を体験できたことがとても嬉しく、これをきっかけに他のいろんなゲームを試してみたくなった。

 しかし、「Braid」はまだ完全に終わっていない。隠し要素の書物やスター(星)を見つけなければならない…。