トランプ的世界

 今年11月の米国大統領選が注目の的だ。前回と同様、現職のバイデンと前職のトランプで争われそうだが二人ともあまりに高齢、もっと若い候補者はいないのかと嘆きたくなるが、どうやら米国も日本同様政治家の人材不足のようである。

 選挙ではトランプが復活するかもしれないとの予想が既に出て、もしそうなると世界は益々混迷を深め危機的状況に陥るかもしれない。なぜトランプのような人物が世界で最も影響力のある米国の大統領になれるのか、ここに今現在の問題が集約されていると思う。

 トランプは米国第一主義を標榜しているが真っ赤なウソ。彼は自分第一主義、すなわち自分勝手主義を貫いているに過ぎず、自分が得することばかりしか関心を抱かず、他人はどうでもいいので平気で嘘を付く。そしてこんな似たような思考の人々から圧倒的に支持されているだけだ。

 自分を大切にしたい気持ちを抱くのは人間として当然、しかし自分以外の他者も尊重したいと願うのも人間であり、この均衡の上にかろうじて人間社会は成り立っているが、現在は自己愛がより強まり他者を蔑ろにしている傾向が目立ち、じつに不安定な状況と言えるだろう。

 SNSの発達で承認欲求が強くなり多くの人々が自己に耽溺するようになってきたこと、それがトランプのような大嘘付きを大統領にまで上り詰めさせたのは間違いない。

 しかし一方で、かつて頻繁に投稿していた人がフェイスブックやエックス(旧ツィッター)上で見かけなくなってもいる。ユーチューブも然り、同じチャンネルでも更新が減ったり内容が重複したりマンネリ化し、斬新さが欠けてきた。

 当然そうなっていくと思う。立ち上げた当事者がSNSに振り回されてることに気づき、ウンザリしてそこから距離を置きたくなるからだろう。流行り廃りの変化は激しく、特に電子機器の発達とインターネットの進歩でそれが顕著になった。

 SNSの歴史はまだ浅いが、この形式がいつまで続くか。頻繁に動画アップするのは至難の技で成功する人は稀だ。そもそもユーチューブは10年先も存在しているか。激しく移り変わる時勢に乗ったトランプは運よく頂点に立てただけ。今現在という時代を象徴しているように思えてならない。