不気味な光景

 昔から悪名高い旧統一教会(世界平和統一家庭連合)だが、私も二十歳前後の頃、街中でその関係者らしき若い人から声を掛けられ集会場のような所へ案内されたことがある。話を聞いて胡散臭いと思った私はそこから即退散、深入りすることなく、距離を保てたのは幸いだった。

 私が旧統一教会に対して絶対におかしいと確信したのは、霊感商法の詐欺もさることながら大規模合同結婚式の実態を知ったからだ。競技場のような広い場所を占有し、文鮮明に選ばれ指名された黒いタキシードの新郎たちと白いウエディングドレスの新婦たち、同じ格好をした男女が何万人も整列する光景は異様そのもので、これを見てこの教団の狂気が分かった。

 ところで、異様な光景は何も旧統一教会合同結婚式だけじゃない。もっとも気色悪い典型は軍隊の行進で、特に中国や北朝鮮朝鮮民主主義人民共和国)の軍事パレード、遡ればナチスの整列・敬礼等、まるでたった一人の人間を大量コピーしたかのような一糸乱れぬ動作は気色悪さを超えた恐怖だ。

 現在の日本でも不気味な光景をいろんな所で目にする。例えば大企業の入社式、新入社員が全員同じ色の同じ形状のスーツ姿、彼らを前に社長が「皆さん一人ひとりが個性を発揮し…」と訓示、バカじゃないか、おかしいと思わないのか。「お前たち、個性なんか発揮したら承知しないぞ!」が社長の本音だろう。公立学校の校則も大問題。同じズボン、同じスカート、同じ靴、同じ鞄、同じ髪型、下着まで同じ色…狂ってる。

 なぜそんなに皆を同じにしたがるのか。それは取りも直さず支配し管理しやすいからで、右向け右、左向け左、と言われた通りロボットのように人々が動いてくれるなら社長や校長にとっては本当に楽だ。これすなわち、人間社会の刑務所化。

 三度の食事を与えられ、好き嫌いとは別にそれなりの仕事に従事することもできる、だから刑務所はある意味「平和で安全」な場所。刑務所に入りたくて犯罪を犯す人が時々ニュースになるが、不安定な社会の現状が続けば、そんな人は益々目立つようになるかもしれない。犯罪を犯さなくても刑務所入りしたがる人が増えるとしたら、権力にとってこれほど都合の良いことはない