人間にとって「変わる」とはどういうことか

 人は誰でも一生のうち何度も大なり小なり変化に遭遇する。周りの環境から無理やり変えさせられることもあれば、前向きに自ら変わりたがることもあるだろう。人間らしく自分らしく生きるため変化は大切な要素で、受動的でも能動的でも変化に対応して柔軟に生きられるなら結構なことだ。

 毎日を生きる中で様々な変化を体験する人間だが、中でも特に重要なのは本人の「生まれ変わり」ではないだろうか。それは過去を精算し、未来へ新たに一歩を踏み出すことを意味するのだから。

 過去の精算とは「事実に基づかない自分勝手な思い込み」を完全に否定すること、それができれば「自分の心の底辺を自覚」することになる。その自覚から謙虚にならざるを得なくなるし、その自覚がなければ本当の意味で新たな一歩は踏み出せないはずである。

 人間は何のために生きているのか? 人それぞれとはいえ、単刀直入に表現すれば、繰り返すがそれは「生まれ変わる」ためなのである。人間と他の生物との決定的な違いは、人間は「自ら生まれ変わることができる」ことに他ならず、それこそが人間の証明かもしれない。

 人間を含めどんな生物もこの世に自ら誕生してきたわけではなく、何も知らないまま産み落とされ、そのまま生かされるわけで、それは何も知らないことを自覚しないまま生存するということ。生まれ変わりは、自らの意志による新たな誕生であり、それは何も知らないことだけは少なくとも自覚して生きるということ。

 当然ながら、自分の無知を知ることで、人間存在の底辺を自覚するだろう。もし「生まれ変わり」を自慢したがり高所から見下す人物がいるとしたら、それは偽者だし、偽善者だし、詐欺師に違いない。