人生の成功とは?

 スポーツや芸能・芸術で名を馳せた人の多くが、「夢を抱き、努力すれば成功する…」と判で押したように言うが、実際、現実的には努力しても夢を叶えたり成功する人は稀で、努力しても報われない人が圧倒的に多い。さらに、努力したくてもできない環境下で生き延びるしかない人々も大勢いる。 

 有名人の言葉はいまひとつ説得力に欠け、中に浮いたような気持ちになるが、とはいえ、そう思うのは夢や成功を 、金や名声、そして他人の評価に重きを置き過ぎるからだろう。本当の夢とか成功とは何か? と考えてみる必要がある。 

 それは一体何だろうか? 突き詰めるなら、それは自分で納得できるかどうか。年を重ね、過去を振り返った時「苦労したけどよく頑張った」と自らに言えるかどうか。少なくともそれが一つの指標にはなるかもしれない。 

 人生を振り返り「良くやったなぁ」と自ら褒めることができるなら、それはある意味とても有意義な人生を送れた証明かもしれない。だがしかし、それも一方で自己満足に過ぎず、単に自らを慰めることで終わっているだけかもしれない。 

 日本と米国のプロ野球界で大活躍し、開拓者とまで言われた、あの野茂英雄投手は引退するとき実に印象的な言葉を残した。彼は「悔いが残る」と自分の野球人生に対して振り返ったのだ。

 側から見れば野茂英雄は野球界における大成功者のひとり。しかし本人は自分で慰めるどころか、むしろ自らに厳しい評価を下し、まだまだやれることが沢山あったのに残念、という悔いを抱いたまま現役を引退したわけだ。 

 私は今現在人生の後半を生きる身だが、やりたいことがまだまだ沢山あるので過去を振り返る余裕などない。「常に前向きに…」になんてカッコ良過ぎるが、しかし、私は死ぬ直前に、もし自分の人生を振り返ることができたなら、「よくやった」と慰めるよりも、「悔いだらけ」を自覚しつつ人生にオサラバしたいと思っている。