私たちの世界

 雨が降ったり止んだり、いかにも梅雨空で鬱陶しい。七月に入ってから、未だキレイな青空を拝んでいない。肌寒いので少し身体を動かすが、湿度が異常に高くジメジメした衣類が肌にまとわりつくのでとても不快だ。

 もう二度と青空を拝むことはできないかもしれない、とさえ思うほど断続的に雨が降りつづく。風は吹かず、雨音以外は何も聞こえないから、永遠に雨の世界に私は閉じ込められてしまったかのよう。

 そんなジットリと湿った世界で読書に耽り、平穏を貪り、私は自分だけの生を満喫している。しかし一方で、河川が氾濫し、濁流に呑み込まれ、同時間帯で大勢の人々が辛苦を舐めさせられ瀕死の状態にある。

 なんだか不思議だ。テレビを点ければ悲惨な被害状況が刻一刻と映し出されるが、私はあえてそれを見ることなく現実世界を遮断し、異世界に逃避する。私たちの世界とはいったい何だろう。

 誰も本当の世界を分かっていない。新型コロナの感染拡大で世界中がうろたえ、自然災害や事件や事故が次々と発生、果たしてこの先どうなるのだろう…。 

 物事は予想どおりには決して行かない。自分のこれまでの人生を振り返っても、都合良く進んだことなどまずない。そもそも予想したり都合良く思い描くことなどあまりしなかったから、いつも目の前に展開する現象や出来事は驚きに満ちていた。それは新鮮な体験になったと同時に不安な感情も芽生えさせた。

 昨夜。おそらく深夜遅く3時頃だったろうか、物音で目が覚めた。一度目を覚ますと、その後、なかなか睡魔が身体を包むことはなく、長時間布団の中で寝返りを繰り返していた。

 妙な音が聞こえた。胃のあたりでかなり大きな音がした。そんなところからどうして? 空腹でもないのに、しかし何度も クー クー と音がする。得たいの知れない何かが私に覆い被さっていたのか、ちょっと薄気味悪かった。それが私の不眠の原因だが、これも世界の一端だ。