国民栄誉賞にふさわしい人

 日本には様々な賞が設けられているが、中でも大衆に人気があるのは「国民栄誉賞」かもしれない。これまでの受賞者は芸能人かスポーツ選手でほとんど占められている。是非は別として、この名の賞に本当にふさわしいのはどんな人かと考える。

 芸能人やスポーツ選手で功績のあった人なら、確かに無難かもしれないが、しかしこれは国民栄誉賞なのだから、日本に対して、国民に対して、最も貢献した人物にこそ与えられるべきで、そのように考えると、今の私には一人の男性と一人の女性の顔が思い浮かぶ。

 それは、ペシャワール会中村哲さんと、イラクでボランティア活動を続ける高遠菜穂子さんだ。この二人がどれだけ日本を救ったか計り知れず、アラブとイスラムの世界から日本を断絶させなかった最大の功労者である。

 高遠菜穂子さんに関しては、2004年イラクで他の男性二人と共に武装勢力に拘束、人質となり、その後解放されたことは今現在でも強烈な印象として残る。その後、彼女は日本国内で猛烈なバッシングを受けるが、その理由は「多大な迷惑をかけたから」だった。

 繰り返すが、高遠さんがどれほど日本を救ったか計り知れない。ところが彼女は賞賛されるどころか、逆に激しいバッシングを受けてしまう。なぜ日本では真逆の現象になってしまうのか。

 理由は簡単。無責任体質と、偉い人たちに迷惑をかけてはいけないという、まさに日本の悪しき伝統習慣に国民の大半が染まっているからで、高遠菜穂子さんのような人物がバッシングではなく賞賛されるような、つまり「弱者に優しく強者に厳しい」そんな社会に日本は変わらなければとつくづく思う。 
 
 中村哲さんや高遠菜穂子さんが国民栄誉賞を授与されるようになれば、日本社会の雰囲気はガラリと変わるし、逆に日本の雰囲気が変わり中村さんや高遠さんに国民栄誉賞が与えられるなら、おそらく安倍内閣など誕生するはずがなく、仮に誕生しても厳しく批判されつづけ長続きすることはないはずだ。