未来に向け

 かつて日本のプロ野球の実態はじつに歪な組織形態だった。読売(巨人)というたったひとつの球団がトップに君臨し、その下に日本プロ野球の事務局が、その下にセ・リーグ5球団が、さらにその下にパ・リーグ6球団が組織されていた。

 今現在、セ・リーグパ・リーグの差はほとんど無くなり、表向き12球団は一応平等に配置されているかのように見える。球団移転を図り、地域密着を目指したパ・リーグの功績が大きい。スポーツは何より公平・平等で民主的に運営されなければならない。

 転じて世界に目を向けると、現状はまるでかつての日本のプロ野球のようだ。アメリカ(米国)というたったひとつの国がトップに君臨し、その下に国連が、その下にヨーロッパ諸国が、さらにその下にアジア、アフリカ、中東、中南米の国々が配置されているかのよう。

 米国と肩を並べようと画策するロシアと中国は大国意識丸出し、世界はさらに捻れ捩れる。民主主義はまだまだ声だけ言葉だけが実態で、自由・平等・公平からはほど遠い。

 民主主義の道は遠い。振り返れば、第二次界大戦終結から70年。もう70年というより、まだたった70年。70年で民主主義が確立するなんて、そんな簡単にはいくまい。

 たとえば、戦前の日本は天皇制絶対主義。女性に参政権、選挙権すら与えられなかった。70年前までは民主主義の言葉すら公には口に出せなかった。戦後、日本は民主国家を宣言。70年間なんとか他国と戦火を交えずに済んだのは日本国憲法のお陰である。ただし、日本の現実は日米安保条約がトップに君臨し、日本国憲法が蔑ろにされている。

 今現在、立憲主義、自由、平等、平和などの言葉は力強い。実態は伴わなくとも言葉は前面に出せる。それらの言葉が言葉として確立されたことだけでも時代の進歩かもしれない。

 重要なのは方向性だ。未来に向け、それらの言葉が社会に活かされ具現化されなければ。まだ、この先200〜300年はかかるかもしれないが、方向を間違わなければ民主主義は廃れることはない。