日本はまだマシ?

 嘘をつき騙しただけでなく、裏金を使い放題、脅しと懐柔で勢力を伸ばしてきた反社会的勢力。そんなヤクザ組織に長く君臨してきた親分が、組織の犠牲になった親の子供に殺されたとしたら、世間は暴力反対を唱えその子供だけを批判・断罪して終わりにするつもりか。

 ヤクザの親分が殺されたなら勿論刑事事件として捜査すべきだが、それとは別に反社会的勢力の言動も徹底的に調査し、裏社会の実態に光を当て分析しなければ到底納得できない。なぜそんな事件が起きたのかを探らなければ消化不良になる。

 推理小説で事件の真犯人が分かるだけではダメ。作品として犯人の動機が明らかにされないと物足りないし、さらになぜそんな動機が生じたのか、周囲の環境や社会的状況にも目を配り、全体像が理解され初めて傑作となる。

 さて、私怨から銃撃され殺された安倍晋三元首相を、政府は「国葬」で弔うことに決めた。費用は全額国費、即ち私たちの税金である。

 岸田現首相は「民主主義を断固として守り抜くという決意を示す」と表明、それにしても、民主主義を破壊しつづけた売国奴安倍晋三の弔いを、民主主義を守る理由にするとは何たる矛盾。ここに現在日本の問題が集約され、政治の劣化が如実に現れている。

 権力の側が発する言葉と現実社会とのあまりの乖離、その溝はますます広がり深くなるばかり。

 理想と現実が一体になることはあり得ないが、社会の平和と安全、一人ひとりの自由と平等、それら理想に少しでも近づけようと努力しなければ。ところが現実は、専制と隷従、圧迫と偏狭、洗脳と没個性、それらが蔓延し窮屈極まりない。

 どちらに進もうとしているのか、すなわち方向性こそが問われなければならないのに、日本人の多くが「日本はまだマシ」と思い込まされ、社会の刑務所化が益々進む実態が悲しい。