生産労働者からの訴え

 アップルのスマートフォンiPhone6と6Plusが発売(9月19日)されて、早くも1ヶ月以上過ぎた。予想を上回る人気からわずか発売3日間で1000万台売れたとあちこちで話題にもなった。

 じつは私も予約解禁初日(9月12日)にiPhone6Plusを代理店に申し込み、発売初日か、おそくとも1週間以内には手にするつもりだった。ところが今現在(10月21日)になっても手に入らない。

 知り合いには私より遅く予約したのに手にした人や、予約なしに直接販売店に出向きその場で手にした人もいたことから、1ヶ月以上経っても手に入らない私自身の状況に、何かの間違いか、ひょっとして忘れられたのではと不審が湧いた。そこで代理店に電話してみたところ、ちゃんと予約リストに入っていることを確認。

 各代理店・量販店の割り当てから運良く手にした人もいれば、私のように取り残された人もいる。実際、私と同様多くの人が取り残されたようである。なぜ手に入らないのか? それは大量の注文に対して生産が追いつかないからだ。

 せっかく早めに注文したのになかなか手に入らず、それでかなり怒っているユーザーもいる。早く欲しいから早めに予約したのに、いつまで経っても手に入らない状況に怒りたくなる客の気持ちは分かる。しかし、ここはちょっと冷静になった方がいいだろう。

 かつて私は長らくメーカーに勤めていた。じつは、経験者としてどうしても訴えたいことがある。生産する側に身を置いたサラリーマンの一人として何が一番嫌だったか、それは「早くやれ!」と急かされることだった。常に急かされながら仕事に追われる毎日は、私には全然面白くなかった。やがて私は会社を辞めた。

 新しいiPhoneは欲しい。なるべく早く欲しい。しかし「早く欲しい」という気持ちが生産者(特に底辺で働く労働者)を急かし圧力をかけていると思うと申し訳ない気持ちになる。競争に煽られスピードに翻弄される風潮が、さまざまな格差拡大の要因であることは間違いない。

 そんなに慌てて作らなくても…とこの際のんびり構えることにしよう。そのうち、iPhone7が発売されてしまうかもね(笑)。