私の巨大な倉庫

 私が暮らす金沢市は人口46万ほどの典型的な中核都市だが、全国の数十万人の人口を抱える都市と同様ドーナツ化現象が進み、郊外の巨大なショッピングセンターに人が集中、街の中心部から日用品等を扱う小売店はほぼ消滅した。

 食料を中心に生活用品のほとんどを私は近くのショッピングセンターで買い物する(ここしかないのだから仕方ない)。とにかく何でも揃っているので便利ではある。私はショッピングセンターに来る度、何も買わなくても、どんな商品が並んでいるか興味津々、店内の隅から隅まで行ったり来たりする。

 さて、店内を歩き回りながら私は決意を新たにした。このショッピングセンターを自分のモノにしようと。もちろん、何億・何十億という巨額を払ってセンターの持ち主になるつもりはなく、実際そんなことできるわけがないし、そもそもセンターの経営なんかにまったく興味はない。ただ気持ちを完全に切り替えたのだ。

 要は店内の品物全部が自分のモノだと思うことにした。あまりにたくさんの品物を所有して置き場所に困ったので、このショッピングセンターを倉庫代わりとしてちょっと活用しようというわけ。レジでお金を払うのは管理費のつもり。

 何かが必要だと思えばいつでも自分の倉庫から出してくればいい、という感覚。

 小売店が消滅し、買い物弱者の高齢者にはなんとも住みにくい時代である。巨大資本がなんでも飲み込み殺伐とした空気が街中には漂う。自分を含め、誰もが長生きすれば高齢者になり身体は衰弱してゆく。ショッピングセンター乗っ取りは、そんな弱者からのささやかなる復讐だ。