イヤな気分

 つい先日、母親と一緒に夕食を摂っていた18時〜19時の間のこと。表のチャイムが鳴ったので、誰だろう? と玄関を開けたところ、乳母車と一緒に中年の母親らしき女性が立っていた。目が合うと、私に向かって「集会があるので来ませんか」と一方的に語りはじめる。

 一瞬、町内の人かなと思ったが、まったく知らない初めての女性だった。「集会に来てほしい〜」との嘆願だが、いったいどんな集会なのか、そもそもあなたは何者で、どこに所属しているのか、と聞いてみるが、口を濁らせてハッキリ言わない。「家族のことや、人間関係のことなど、いろいろ有意義な話が聞ける集会だから為になる」と相手は私を勧誘するばかり。

 私は呆れ返って、再度、いったいどこの団体なのか、と問いつめると、相手の女性はしぶしぶ「宗教関係」と口にした。何となく怪しく、最初から宗教がらみだと想像していたから別に驚くことはない。宗教の勧誘だと分かった時点で、女性からのお誘いをハッキリお断りした。

 そして私からは、お断りしながらついでに、他人の家を訪れるときは始めに自分の正体をキチンと明かさなければいけませんよ、と忠告しておいた。すると相手は「そういうことを喋ってはダメだと言われているので…」とかなんとか口をモグモグさせ、バツの悪そうな表情を浮かべながら退散したのである。

 いったいこれはどういうことか。こんな勧誘ってあるだろうか。こんな怪しげな方法で人が集まるとでも思っているのだろうか。以前にも何度か我が家を訪れたことがある、おそらく○○教だと思うが、こんな人集めをする宗教団体など絶対に信用できない。

 それにしても、乳母車の女性は哀れだ。多少の駄賃は貰っているのか、単なるボランティアなのか、よく分からないが、自ら積極的に行動しているとはとても思えず、団体の幹部から、ああしろ、こうしろ、と支持されるまま操り人形と化しているようである。生活が苦しくて、たまたま○○教の誘いに乗ったのだろうか。心が追いつめられたとき、少しでも救われたいとの気持ちは分からぬではないが…。

 夕食の献立は「おでん」だった。中断され、変な話に付き合わされ、せっかくのおでんが冷めて、すっかり不味くなり、イヤな気分になった。