人それぞれ

 今現在9才の仲邑菫という名の女の子が、10才になる四月に史上最年少で囲碁のプロ棋士になるというニュースが話題だ。私なんか「ただただ凄い」という感想しかない。この女の子は喋り方も大変上手で、それにしてもたった10才でプロ棋士とは、いったいどんな環境にあったのか。

 自分の子供時代をつい振り返るが、私が10才の頃は遊び呆けて学校の勉強はまるでダメ、話しも支離滅裂で人前に出るとまったく体を成さず、つまり、だらしない少年の典型だった。

 英才教育を受け「天才」の称号をいただく特別な人がいて、私のような居るのか居ないのかわからない平均以下の凡人もいて、人それぞれ、だから世の中面白いのだが…それにしても違うな。

 ところで「昔は良かった」とつい口に出る人は、おそらく子供から青年にかけての若い頃、楽しい思い出が学校時代を含めたくさんある優秀な人たちだったに違いない。時代の移り変わりと共に、大人になるにつれ生きることが窮屈に感じて、それが過去への郷愁につながるのじゃないか。

 しかし、上記のような優秀な人たちとは逆に、年を取れば取るほど、これから先もっと良くなると思う人も希にいる。そう思える人の特徴として、若い頃に辛い経験をたくさんしていつも片隅に追いやれていたことが挙げられる。だから「昔は良かった」なんて露ほども思わない。

 個人の経験と時代状況とはリンクする。過去、現在、未来とも悪いイメージしか抱けない人たちも勿論大勢いるが、一方で昔も今もこれからも良い状態を維持できる人などほとんどいないだろう。なぜなら今が良いと感じるのは昔が悪かったからであり、昔が良ければ今が悪く感じるのが普通だから。昔も今も未来も良いと思いたがるなら、それは起伏のないつまらない人生に過ぎない。

 繰り返すが、人それぞれ。私のような特別な才能に恵まれなかった凡人にとって、拠り所は未来にこそある。だから、勝手に言わせてもらおう、本当の人生は80歳を過ぎてからだ!