三つの最重要「〜ない」

 予期せぬ展開に進むことはままあるが、それも冷静に分析すれば理由があってのこと。偶然と必然は対立する概念のようだが、偶然の出来事の背景には必然の要素が隠れている。

 コンピュータが発達し、インターネットが国境を超える。にもかかわらず、狭心な右翼的思想が蔓延するのはなぜか。IT機器の進歩は、世界を一つにするための有効手段になるはずだったが…。世界が一つになりエリートに支配されることへの拒絶反応、まさにこれこそが人々の心に新たな壁を作り出した。

 分断を図るためにインターネットが利用されるとは、なんという皮肉で本末転倒な現象であることか。現在の右翼的流れは予期せぬ出来事どころか必然だった。科学技術だけで人間の自由と平等を実現させることなどできない、それがつくづく分かる。要は人間の心の問題、新たな哲学が求められる。

 ところで東映で活躍した俳優の菅原文太(1933~2014)は、晩年、政治的活動にも参加、その中でいろいろ発言をしていたが、「戦争をしない」「国民を飢えさせない」この二つを特に強調し、それが最低限の政治家の仕事だと訴えていた。

 その通りで賛同するが、私はさらにもう一つ付け加えたい。それは「社会を刑務所にしない」こと。「戦争をしない」「飢えさせない」「刑務所にしない」以上の三つを中心に政治や経済、すなわち人間社会の有り様を考察したい。

 昔も今も、そして未来にも、人類に横たわる最も深刻な問題とは、端的に言えば「格差・差別が蔓延してる」ということだろう。同じ人間なのに「何故こんなに違うのか?」

 「格差・差別」を完全に解消させるのは、どんな時代であろうと甚だ困難なことは分かる。しかし、それを極力縮小させるため努力するのは、人類全体の発展のためとても重要であることは明白だ。

 「格差・差別」をなるべく無くすため、「戦争をしない」「飢えさせない」「刑務所にしない」それら最重要課題に取り組まなければならないのだと痛感する。私たち一人ひとりが考え、そして身の周りから実践すること。