「家」からの解放

 「家」を所有し「家」に住みなれると「家」から離れられなくなる。その「家」が自分の物であるとの意識がとても強くなるからで、当たり前と言えば当たり前だが、しかし人間が不幸になる一因がじつはここにある。

 「家」にこだわり過ぎると家の外になかなか目がいかなくなる。どんな豪邸であろうと、外側の世界の方が遥かに広く面白いはず。世界に目を閉ざし「家」に閉じこもるのは利己主義の究極の姿とも言える。

 「私的」なものの呪縛から脱却し、様々な公共施設を充実すべき。図書館、公衆浴場、映画館、自然公園、保養施設や介護施設など、大勢の人々が気軽に利用でき共有できる時間と空間がどんなに重要であるか。

 各々のプライベートな領域はもちろん最優先。だが、「私だけの領域」の拡大に精を出すべきではない。公共施設の時間と空間を確保・共有するということは、世界が自分のものになるということ、と同時にあなたのものでもあるということ。