裏の裏の事実とは

 イスラム過激派による日本人人質事件は、湯川さんにつづいて後藤さんが殺害されるという最悪の結果を招いてしまった。情勢を見通せなかった外務省の責任はとても大きく、安倍外交の大失態だと思う。

 それにしてもこの事件は謎だらけだ。分からないことがあり過ぎるが、特に分からないのは湯川さんという人物である。湯川さんが殺害された後、話題はほとんど後藤さんのみに集中し、後藤さんが殺害されてから湯川さんはまるで忘れ去られたかのようになってしまった。

 湯川さんとはいったい何者だったのか? 軍事会社を自ら作りその取締役に収まっていたらしいが、裏ではどんな人脈を抱えていたのか? 湯川さんと日本の右派グループとの関係は? 単なる軍事オタク? 後藤さんと湯川さんの立場は明らかに違う。湯川さんのこれまでの言動や民間軍事会社の実態及び背景、それらを徹底的に暴かなければ今回の事件の本質は見えてこないような気もする。

 後藤さんは、先に拉致され人質となった湯川さんを救うために現地に潜入したことになっているが、本当なのか? 後藤さんひとりで湯川さんを救い出す? 信じられない。後藤さんは本当に自らの意志のみで出かけたのだろうか? 後藤さんは何らかの使命を担わされていたのでは?

 湯川さんは昨年の8月頃、そして後藤さんは11月頃に拉致され人質になった。この間、外務省はいったい何をしていたのか? 疑惑は深まるばかり。この事件、裏の裏があることは間違いない。

 大手マスコミを中心に報道は溢れているが、しかしどれもが表面的で物足りない。後藤さんが殺害され「残虐非道」「許せない」「テロとの戦い」等々感情的言動がマスコミを賑わすだけ、なんとも軽々しく寒々しい。繰り返すが、湯川さんへの言及がほとんどないのはなぜだ?

 国同士の争いからテロとの戦いへ、世界は2001年の米国同時多発事件以降大きく変貌した。武力は国家の軍隊から国連が管理する警察組織へと移行すべき。日本の憲法第九条を活かし、国家から軍隊を無くす。狭くなった地球上の犯罪に国境は意味をなさず、一人ひとりの問題としてもっと世界全体で考えなければ。