高齢者と暖房器具

 各地で「木枯らし一番」の便りが届き、いよいよ本格的な冬を迎える。今冬、いつもより寒さは厳しくなるのだろうか、それとも緩むのだろうか。幼児やお年寄りと同居している家庭では、夏の暑さと冬の寒さに関して一般の人が想像する以上に気を使う。

 私は、もうすぐ96歳になる超高齢者の母親の面倒を見ている。夏は熱中症にならないよう気をつけるが、それ以上に冬の期間は火の元に神経過敏となる。火の取り扱いを間違えると自分の家だけでなく近所にまで影響を与えるため、個人的な熱中症どころの騒ぎではない。

 冬に暖房器具は欠かせず、貧乏人の我が家でも旧式とはいえコタツ、エアコン、電気毛布、そして石油ストーブまで揃えている。母親はエアコンが嫌いでほとんど使わないし、電気毛布は寝る時だけだから、日中はコタツと石油ストーブのお世話になる。

 コタツは電気なので安全性は高い。問題は石油ストーブで、暖かさでは一番だが直接炎と向き合うから高齢者にとってはもっとも危険である。

 じつは昨年、母親は濡れたタオルを乾かそうと石油ストーブに掛けて、そのまま奥の部屋に引っ込んでしまうことがあった。そのとき、用を足すため二階から降りてきた私が運良く石油ストーブに掛かったタオルを発見して事なき得たが、タオルは焦げて火事になる一歩手前だった。物忘れの激しい母親は自分の行為を認識できない。

 いくら母親の世話をしているとはいえ、四六時中そばにいるわけにはいかず、買い物や銀行や郵便局にも出かけなければならない。ほんのしばらくでも母親が一人になったときが心配である。寒さが厳しくなるにつけ、いちいちストーブを消すわけにはいかないのだ。たとえ私がストーブを消しても、寒いからと母親は勝手に火をつけてしまう。

 衰えがますます激しくなる母親を一人にして石油ストーブを置くのは危険。この冬、石油ストーブは使えない。コタツだけでは寒く、なんとか代替品を探さなければならない。今は、コストやデザインもさることながら、何といっても安全性を第一に考える。早めに新しい暖房器具を見つけなければ。