家の中には宝物が眠っている

 私の家は築100年近くにもなり、いつ崩壊してもおかしくなく毎日恐る恐る暮らしている。これから冬を迎えるにあたり積雪がとても心配だ。そんな古い家屋で母親は長年生活しながら大小さまざまな物品を保管し、それらを押し入れなどにしまい込んだまま超高齢者になった。

 もうすぐ95才になる母親は、もはや部屋の隅や押し入れに何があるのかまるで分からない。これまで捨てるのを嫌がる母親のためそっとしておいたが、母親の記憶力はすっかり衰えたし、また家全体のことを考えるともう少し整理整頓しなくてはと、古い物を近頃少しずつ処分するようになった。

 プラスチックのケースや、ガラス、瓶、空缶、さらにバッグやカゴや雑誌など、何年も手をかけず埃をかぶった品物がたくさん出てくる。カビが生えたり、欠けたり、傷ついたものは即ゴミ出し。

 さて、押し入れの奥には何やら大きな長方形の物体が隠れている。いったい何だろうと初めて明かりの下に出してよく見ると、なんとこれが昔の除湿機ではないか。ずいぶん重い。10年以上、いや20年ほども前の製品ではなかろうか。とても使えそうもないので処分しようと思ったが、念のため電気を入れて動かしてみた。

 この旧式の除湿機、スイッチを入れて変な音や臭いがしたらすぐに切って粗大ゴミに出すつもりだった。ところが意外なことに順調に動く。数時間そのままにしていたがまったく異常はない。タンクには除湿した水がタップリと溜まっていた。なんだ、まったく正常じゃないか。90%もあった部屋の湿度計の針が70%にまで落ちた。半分捨てるつもりでいたが、もったいないのでこのまま使用することに。

 北陸の冬は湿気が多く洗濯物がなかなか乾かないので、除湿機があるのとないのとでは大違いだ。押し入れの奥に長く隠れていた宝物を探し当てて、なんだか急にうれしくなった。最新の除湿機はいくらするのか知らないが、数万円得したような気分だ。

 古い家ほどいろんな物であふれているだろう。眠ったままの逸品がたくさんあるに違いない。もったいないと思う。たまには整理整頓してみたらいい。思いがけない代物が発見できるかもしれない。