IT機器類の履歴

 かなり昔のことだが、電気機器の会社に入社したとき初めてキーボードに触った。キーボードで文字を打つとモニターに表示され、さらにモニターの画面がプリンターで印字されるのを見たとき、私はとても感心した。それは一種の感動であった。機械嫌いだった私が、それからというものワープロやパソコン等に興味を抱くようになった。

 自分用の最初のIT機器は液晶が一行表示のワープロだった。メーカーも型式も忘れたが、一時金(ボーナス)が出たとき電気量販店で購入したことを覚えている。以来、新型が発表される度に買い替えていたような気がする。やがてパソコンへ移行することとなり、ワープロ専用機は卒業した。その後、パソコンは最初のNEC製PC9801という機種から、エプソンやサンヨーや富士通のラップトップやノートやデスクトップを使用してきた。

 思い返せば、ワープロだけでも5〜6台、パソコンだと6〜7台替えたことになるだろうか。プリンターは4〜5台か。私などパソコンを買い替えた数だけなら少ない方かもしれず、好きな人なら私と同年代で数十台という人もいるに違いない。普通の家が建てられるくらいパソコンにカネを注ぎ込んだ人もいるらしい。

 ワープロやパソコンだけでなく、ビデオデッキやCDプレーヤー、さらにDVDレコーダーなどいろいろ買い替えたことも思い出す。ついでにアンプやスピーカーなどオーディオ機器類の変遷もあった。

 私は基本的にモノを大切にする人間なので、古くなったからといって捨てることにはかなりの抵抗がある。ただ、賃貸アパートの狭い一室に長く住んでいたので置く場所に大変困り、新品を購入する度に旧式の機械は処分せざるを得なかったわけである。

 もったいないことをしたなぁ、とじつは後悔している。これまで自分が購入したIT機器類を陳列してみたいと思う。小さな部屋でもバラック小屋でもいいから確保して棚を作り、そこにこれまでのワープロやパソコンなどを並べてみたい。もちろん、もう実現不可能だが、それくらい今になって振り返るとそれらの機器類には愛着を感じるのだ。

 IT機器類だけでなく、触れて来たいろんな機械の履歴を見るだけでも楽しい。楽しいだけじゃなく、懐かしさが込み上げてくるだろう。過去から現在へと、それらに関連した大勢の人々の鼓動が聞こえて来そうだ。機械にはノスタルジアが詰まっている。