紙一重

 今年のプロ野球日本シリーズは読売(巨人)ジャイアンツが日本ハムファイターズを4勝2敗で退け優勝した。私はファイターズを応援してたので残念だったが、かつてほど野球に関心があるわけではない今現在、結果そのものに一喜一憂することはなくなった。それでも試合を観戦しながら何かを強く感じたことは確かだ。

 その何かとは、やはり勝負とは本当に紙一重だな、ということ。ほんのちょっとしたことで結果が左右する。今回のシリーズでも、第5戦の読売加藤選手の名演技による審判の大誤審などあったが、私が一番印象に残ったのは第6戦の3対3から7回表ファイターズの攻撃、ツーアウト満塁で糸井選手がライトフェンスギリギリの大フライを打ち上げアウトになった場面。もしほんの10センチほど打球が高ければフェンス直撃の2塁打以上となりファイターズは一挙に逆転、読売を突き放し勝利を確実にしただろう。その勢いから第7戦も勝利しファイターズが日本一になったかもしれない。

 あのときヒットになるかアウトになるかでは天と地ほどの違いを生むことを、野球ファンなら誰もが感じたはずだ。過去の日本シリーズでも勝負の明暗を分けた紙一重のシーンがいくつもあった。これは野球だけでなくスポーツ全般、いや人生そのものに当てはめることができると思う。じつは、毎日の生活が紙一重の連続のような気がしてならないのである。

 仕事や遊びや恋愛など人生を彩る様々な出来事も、わずかな差による分かれ目の連続ではないだろうか。大きな事故や事件に巻き込まれるか無事にすむか、有頂天になるかガッカリして悲嘆に暮れるか、たとえ何とか平穏無事に生きて来たとしても、紙一重の差で今後どうなるか分からない。私自身、過去を振り返り、もしあのとき…といろいろ想像してみると、ゾッとしたり悔やんだり、またはホッとして、複雑な感情に苛まれる。

 紙一重。だからこそ人生は、辛く、哀しく、嬉しく、楽しく、面白い。

 さて、野球に戻り、今現在日本のプロ野球界で私がもっとも魅力を感じる選手とは、じつはあの大フライを放った日本ハムファイターズ糸井嘉男選手である。走・攻・守すべてに優秀なだけでなく、背が高く均整の取れたガッシリした体格からはイチローを凌ぐスケールの大きさを感じる。大リーグでも立派に通用するはずだ。糸井嘉男選手からは「ターミネーター」や「サイボーグ」をつい連想する。今後のさらなる活躍を期待しよう。