三流プロレス

 脳天チョップでフラフラになった敵はロープに飛ばされ、戻ってきたところを16文キックが喉元に炸裂、敵はグロッキーになりダウン、カウント・ワン、ツー、スリー。悪漢レスラーの挑戦を見事に退け大逆転勝利、血みどろになりながらジャイアント馬場インターナショナル選手権を死守。

 子供の頃はプロレスに夢中だった。次々と米国から強敵レスラーが来日した。巨漢でいかにも悪役面した彼らの挑戦を受けながら、世界チャンピオンベルトを決して渡さなかったジャイアント馬場アントニオ猪木はヒーローだった。

 一方で不思議でたまらなかった。翌日の朝刊を見ても、スポーツ欄には野球や相撲やボクシングの記事ばかり、プロレスの記事が一行も載っていない。なぜ? どうして? 世界選手権でジャイアント馬場が勝ったんだぜ、デカデカとトップ記事になって当然じゃないか!

 ……プロレスと他のスポーツとの違いを知るのはもう少し時間が経ってからだった。真剣勝負よりもショー的要素を強く求められるのがプロレスなのだ。これはスポーツというより芸能だ。だから、一般の新聞記事には載らない。だから、60分3本勝負で時間はたっぷり残っているのに、テレビ番組の終了間際に決着がつく。

 ところで、消費税増税のための「社会保障と税の一体改革」における民主・自民・公明のギリギリになっての三党合意は、初めから結果ありき、下手くそなショーを見せつけられたような気がした。「原発再稼働」にしても同じ、今後のエネルギー対策や安全性を判断するよりも、最初から結論は再稼働ありき、シナリオ通りの演技をしていたに過ぎない。

 今やプロレスは立派なショービジネスとして誰からも認知されている。様々なプロレス団体が各地方に誕生して地域住民を楽しませている。方や、いかにも真剣に取り組み苦渋の決断のよう、じつは裏側でどんな取引が行われていたのか疑惑の眼でしか見られないのが政治の世界。

 政治がショーになっていいのか。与党と野党が入り乱れるリングの上で、初めから出来レースの三流プロレスを見せつけられる国民は不幸だ。クソ面白くない。