北陸新幹線が開業すると

 私の地元、石川県金沢市では連日のように北陸新幹線の話題がテレビや新聞に取り上げられる。金沢〜東京間の開業予定は2014年度末(2015年3月)で後3年ほど。工事は着々と進行しており、雑草だらけだった更地にはいつの間にかコンクリートの橋脚が立っている。駅周辺も整備され、知事や市長の前向きな発言がやけに目立つ。

 地元経済界の期待は大きい。なにしろ金沢と東京が2時間30分で結ばれる(現時点では越後湯沢経由で最短でも4時間)。往来がしやすくなり中央から多くの観光客を呼び寄せ、金沢の衰退をなんとか食い止め活性化させたいようだ。その気持ちは分かる。だがしかし、実際にフタを開けると、バラ色の夢は無残にも雲散霧消しかねない。

 北陸新幹線が開業して特に大きな問題が二つ予想される。一つは小松空港の利用客が激減すること。もう一つは旅館やホテルの宿泊業が打撃を受けること。

 小松空港を離着陸する飛行機の約7割が小松〜羽田便だ。新幹線に比べ、トータルで値段が高く時間も掛かる小松〜羽田便を利用する客など激減どころかほとんどいなくなるに違いない。また、直通の新幹線で日帰りが容易になることから、ビジネスホテルを中心に街中の宿泊施設は半減するのではないだろうか。

 じつは、以上のことはかなり前から分かっていたが、最近ようやく予想される問題についてポツポツ報道されるようになった。楽観的な報道に比べると問題提起する報道量はまだまだ少なく、市民を巻き込む議論でさらなる深堀が必要だ。おそらく水面化で専門家たちはいろいろ意見を交わしてきたのだろうが、しかし小松空港と宿泊業の問題だけでも打開できる具体的な対策は提示されていない。他にも、通勤・通学客が利用する平行在来線は赤字が確実視され、これも大きな問題となる。

 1998年長野冬季オリンピックが開催されたとき同時に長野新幹線が開通したが、そのとき長野市は大喜びしていた。あれから15年。街中は惨憺たる現状らしい。逆ストロー現象で、東京からの人の流れよりも、東京へ一方的に人が吸い寄せられている。長野駅周辺は「テナント募集」の張り紙だらけという報道を以前に見た。

 航空業務ではピーチのような低価格や海外路線の開発が必要だろうし、旅館やホテルを利用したい魅力ある街づくりへの転換が求められる。幸い金沢は地方都市では観光や歴史・工芸などで恵まれている。それでも余程の工夫を凝らさないと、ゴーストタウンへまっしぐらとなりかねない。