素晴らしかった金環日食

 朝、6時半前に目覚ましで起床。障子を通して明るい日差しが届く。晴れているらしい。一生に一度かもしれないチャンスが訪れた。着替えて外に出る。太陽はもうすでに相当高く上って眩しく、なんと快晴だ。

 月曜日は燃えるゴミを出す日。指定の場所までゴミ袋をぶら下げて歩きながら朝方の様子をうかがう。近くの河川敷には何人かの人々が上空を眺めている。ゴミを処理した後に私も河原まで降りてみる。さっそく専用グラスを取り出し太陽の方角を見つめると、日食がすでに始まっているじゃないか。ハッキリと太陽の一部が欠けているのが分かった。

 ピークまでまだ1時間近くある。さすがにじっと眺めつづけるわけにはいかないので、一旦家に戻ることにした。テレビはどの局も金環日食の特集番組で全国の至る所から生中継している。直前まで盛り上がらない雰囲気だったが、当日の朝になりガゼン全国津々浦々まで日食大フィーバーに包まれた感じだ。

 部屋に入ってしばらくすると、なんとなく外が暗くなり「マズイ、雲が出てきたのか」と一瞬焦った。だが、そうではなく日食がどんどん進行しているからこそ薄暗く感じたのだ。これは体感しなければ意味はないと慌てて外に出る。上空に雲なんかほとんどなく、明らかに太陽光線が弱くなって、そして外気もヒンヤリしてきた。

 家の前からでも十分見えるが、もっと広々とした場所で見たい。ふたたび河川敷まで降りて専用グラスで見つめると、日食はどんどん進行して半分以上が隠れている。光と大気の変化を身体いっぱいに感じながら見つめつづける。7時30分を過ぎてとうとうピーク時を迎え太陽の90%ほどが隠れることに。そうしてやがて、じょじょに太陽は元の形に戻っていった。

 金沢では金環ではなく部分日食だったが、それでも十分堪能できた。感謝の気持ちが湧いてくる。日食を直接見ることができただけでなく、地面に写る三日月の木漏れ日も見た。薄暗くなり気温が下がったことも同時に体感できた。美しい光景を目の当たりにして素晴らしいひとときを実感できたことがなによりも嬉しく貴重な思い出となった。

 2035年9月2日には能登半島で今度は皆既日食が見られるという。後23年。真昼が闇になる皆既日食を直接見るまで死ぬわけにはいかないーーそんな気分にさせてくれた昨日の天体ショーだった。