思想調査は心の殺人

 橋下徹大阪市長が職員に実施しようとした「思想調査」に関しメディアがどんな報道をするだろうかと注視していたが、意外というか、予想通りというか、これほどの大問題にもかかわらず扱いは小さかった。全てに眼を通したわけではないので私の印象に過ぎないが、幾つかの新聞の社説やコラムに批判記事は載ったものの、テレビではほとんど報道されなかったようである。ネットの世界ではそれなりに活発に批判が展開されているようでまだ救われる。

 本来「思想調査」は決して行ってはならないものだ。良し悪し以前の問題なのである。政治家の政策に対して賛成や反対の意見が交わされること自体はとても良いことで、好き嫌いの感情を超えて大いに議論を活性化させるべきだ。しかし「思想調査」とは政策ではなく人の心に土足で踏み込み、プライバシーを犯し、自由を蔑にするものであり、断じて許されない行為である。思想調査とは心の殺人行為に他ならない。

 これは橋下徹という人物を好きとか嫌いとか、あるいは政策遂行のための戦術や戦略とか、そんなレベル以前の問題なのだ。だから、むしろ橋下徹を支持する人たちこそが「橋下さん、これはやり過ぎだ。思想調査などしてはいけない」と強く直訴しなければならないし、さらに「思想調査は歴史に大汚点を残し橋下さん自身の恥さらしとなる」と説得しなければならない。

 ナチスヒトラーソビエトスターリン東ドイツの秘密警察、アメリカのマッカーシズム赤狩り)、日本の治安維持法レッドパージ北朝鮮朝鮮民主主義人民共和国)の思想統制・・・それらと今回の思想調査が重なりソックリに見える。

 何度でも言う、「思想調査」は論外である。「維新の会」が疑問を感じることなく「思想調査」をもし平気で推し進めようとするなら日本は衰退するどころか一気に壊滅するだろう。強制からは悲劇しか生まれない。心が殺された人々から自由で斬新な発想など生まれるはずがない。

 それにしてもつくづく思う。橋下徹に限らないが、北朝鮮を嫌いだと声高に口にする人ほど、じつは北朝鮮が好きで好きでたまらないらしく、日本を北朝鮮のような体制にしたくてしょうがないのが本音のようだ。