真の豊かさとは

 前回の日記でも書いたとおり、日本や米国は確実に衰退してゆくだろう。もし、いつまでも「先進国」として世界をリードすることを企むなら自ら墓穴を掘り悲劇を招くことになる。

 コンピューターが進歩し、インターネットがさらに発達することで、世界は益々狭くなりひとつになる。そんな状況の中、いつまでも強国として威張りつづけることは不可能である。先進国として民主主義を自称する以上、途上国に民主主義を求めざるを得ず、民主的な世界が実現すればするほど全体が平準化してゆくのは当然のことだ。

 強国として多くの資源を確保し、贅沢な生活を享受してきたのが、これまでの米国、西欧、日本だった。しかしその豊かさとは「自分だけのもの」という意識から生じる偏狭な豊かさに過ぎなかった。今後も、100億の人間が自分だけの豊かさを、この狭い地球上で求めつづけたら果たしてどうなるか、想像するだけで恐ろしい。

 これからの時代は、「私のものは私のもの、あなたのものも私のもの」という競争と収奪から、少なくとも「私のものはあなたのもの、あなたのものは私のもの」という譲り合いの意識で地球上を生きるしかない。

 譲り合うことでお互いが共有できればこれほど豊かなことはないかもしれない。極論だが、譲り合えるからこそ全てのものが自分のものとなり、同時にあなたのものにもなる。キレイ事にしか聞こえないかもしれないが、これは意識改革である。

 TPPを見ていると、目先の「どうしたら得するか」ばかり、「いかに奪うか」の意識が透けて見える。全体のバランスを考えれば、本当はお互いに「譲り合う」TPPでなければならないはず。長期に渡る未来志向が欠落している。

 もし、日本や米国が民主的に衰退できるなら、これまでの偏狭な豊かさに浸かっていた意識は次第に解放されてゆくだろう。それこそが、敗北ではなく、勝利への道となる。

 豊かさとは何か? もう一度、冷静に、じっくりと考えたい。