いい顔と悪い顔

 人の顔は千差万別だが、いい顔してるなぁと思わせる顔がある。いいか悪いかなんて人それぞれの好みだから独善的で、あくまで自分本位の感覚に過きず、明日にはガラリと変わるかもしれないが。

 私にとって「いい顔」とはどんな顔か、有名人から探せば、例えば競馬騎手の武豊などが当てはまる。彼の顔のどこがいいかと言えば「さり気なさ」にあり、気負いがなく厳しさが前面に出ず、じつに穏やか。素晴らしい成績を残し、現在もトップを維持し活躍しているにもかかわらずだ。

 武豊と似た雰囲気を醸し出す人物に、もうひとり体操の内村航平がいる。彼もまた表情がじつに穏やか、気負いが前面に出てこない。

 この二人を見ているとハラハラドキドキすることなく、いつも安心して見られる。負けても失敗しても別にいいじゃん、という気持ちにさえなってくる。そこがじつにいい。ところが彼らは常に勝者なのだ、なんとスゴイことだろう。

 「いい顔」につづいて「悪い顔」についても書いてみよう。これもスポーツ選手から選ぶならボクシングの亀田兄弟、特に長兄の興毅の顔が典型。目を吊り上げ、気負い、意気込み、睨み、吠え、恫喝する。人間的弱さを外見でカモフラージュしようとする最悪な顔。あまりに浅はか表面的で、彼のパフォーマンスはスポーツを歪めてしまった。引退したらしいが、今後、人として成長してくれることを願わずにはいられない。

 それから大相撲の横綱白鵬。最近、顔がどんどん悪くなってる(ような気がする)。最高の成績を残してきたにも関わらず、いったいどうしたのか? 以前は穏やかで落ち着いて、いかにも大横綱の風格を備えていたのに、協会との確執や、力の衰えからイライラが募っているとしか思えない。先場所、千秋楽の取り組みは最悪だった。これ以上晩節を汚さないでほしい。

 人間の本当の価値は勝ったときや成功したときより、負けたとき、失敗したとき、批判されたとき、振られたとき…にこそ問われる。それらを経験したとき、人はどんな「顔」をするだろうか。