東京五輪 死の行進

 東京五輪に関して、大手IT企業経営者の口から開催中止や延期の声が出始めた。さらにトップアスリートの何人かが疑念を表明し、今後それは大きなうねりになる可能性があり、外国選手からかなりの参加辞退者が出始めると、それに引っ張られるように日本選手からも追随者が出るかもしれない。

 感染が拡大し、死者が増加してる最中に、どう考えても五輪でメダル争いしてる場合じゃない。半年以上をかけて取り組む野球やサッカーなど、長いシーズン中には無観客や数試合の試合延期・中止の措置も施しながら継続し、何とか形を整えることは可能だろうが…東日本大震災が発生した2011年や昨年の場合のように。

 だが四年に一度、多くの競技と種目が狭い地域に集中し、日程が隙間なく埋められ、僅か二週間程の五輪だからこそ危険な最中に開催はできない。ちょっと想像してみただけで分かる。開催一~二週間前、もし震度7の東京直下型大地震でも発生したら、東京五輪はどうなりますか? できるわけないでしょ。

 競技だけでなく、金や名誉や人生までもが集中する五輪だからこそ、大きな問題が生じた時は運営が甚だ困難になる。五輪を特別扱いし肥大化させたことこそが大問題なのである。例えば、国威発揚や商業主義という言葉が前面に出てきた時点でもう五輪の中身は著しく変質したのだ。

 関係者や多くの人々が五輪に翻弄、いや洗脳されている。今回の中止?を機会に運営のあり方を真剣に見直さなければ五輪に未来はない。

 じつは、一部の狂信的な人々を除き、関係者の多くが本音では中止したいんじゃないか。菅政権も、小池都政も、組織委員会も、アスリートの多数も、周囲に忖度するあまり、率先して中止の言説を口に出せないだけなのでは。責任から逃れるため、誰かが先にそれを言うのを望んでいるんじゃないか。

 誰がどう考えても東京五輪の開催は無理。もし強行して実施しようとすれば大災害となりかねず、正に「八甲田山 死の行進」であり、その後の太平洋戦争大敗北となる。残念ながら、今日に至るまで日本人は何も学ばなかった。日本の正気と狂気の分かれ目が刻一刻と迫る。