映画に寄せて

 私は月1000円ほどで映画見放題のhuluに加入してるが、実のところ全然それを有効活用できていない。次々と新作を提供してくれるのはいいが、昔の外国や日本の名作を観たくてもそれらのコンテンツが乏しいのが残念だ(少しずつ増えてると思うけど)。そこで、店先でつい安価なDVDを手にして余計な出費をすることが度々ある。

 月二回程度しか利用しないとしたらhuluはかえって損かもしれず、他の方式に切り替え一本300円の作品をレンタルした方が安くつく。もちろん毎日のように利用すれば話は別だが、とはいえ映画はやはり劇場で鑑賞したいという気持ちは相変わらず強い。

 ところで、金沢市中心部の香林坊東急スクエアビルの4階にミニシアター「シネモンド」がある。内外の良質な作品を常に上映してくれるし、歩いて通えるから私にはとても便利でありがたい存在だ。少なくとも月二回はシネモンドで映画鑑賞できたらいいなと思う。

 そのシネモンドが入る東急スクエアビルの裏通りを歩くと、余程目配せしないと気付かないが「シネマストリート」と刻まれた細長いコンクリートの柱が離れ離れになって二本立っている。辺りは広い駐車場があるばかりで、おそらく初めて来た観光客など、なぜ?と思うに違いない。

 じつはこの一帯、昔はかつての東京新宿歌舞伎町のように映画館がズラリと並ぶ映画館通りだった。そこからシネマストリートの名が付き、劇場が無くなってもその名を残すことにしたわけだ。私の若い頃はこの周辺にしょっちゅう足を運び、特に「パリー菊水」という名の洋画専門館がお気に入りで週末は朝から晩まで入り浸っていた。

 東京に出てからは運良く池袋周辺で暮らすことができたので池袋駅東口の近くに構えていた名画座文芸坐が私のホームシアターとなった。洋邦画問わずたくさんの作品を鑑賞できたことは嬉しく、文芸坐には本当に感謝している。

 それにしても最近のコンピューターグラフィックスを多用した映画には辟易する。ついこの間も「トータルリコール2012」をhuluで観たが、何が本物でどれが偽物か分からないという今日的な重要なテーマは脇に押しやられ、最初から最後まで飛んだり跳ねたり、ドンパチとカーチェイスの連続、単なるアクションを見せるだけの代物に成り下がり、本末転倒も甚だしく、全くつまらなかった。