歴史の大転換

 歴史とは何かと言えば、それは価値観の変遷のことだ。長期間に渡り「これだ!」と信じ込んでいたものが、本当の事実を見せられ古い価値観は音を立てて崩れ去る時がある。歴史はその繰り返し。

 例えば「山」に対する意識などはその典型で、その昔は山に登って帰還しない人が頻繁に出ると、山には魔物が潜んでいるとか、神々の怒りに触れたとか…人々はそのように思い込むようになってしまった。

 しかし科学的な見地で調べれば、山とは単なる土が盛り上がっただけに過ぎないことが分かった。どんな山にも魔物や神々は存在しないことが証明され、科学は数々の迷信を人間から解き放ったわけである。

 山を地球に置き換えるなら、大きな価値観の転換が、いずれ必ず起きるだろうことが予想される。インターネットを始め、AI技術の発達で、今現在は歴史の大転換期だと囃し立てる論調は多いが、しかし本当の転換期はもう少し先になると思う。まだ100年から150年先、それは22世紀を迎えてからだ。

 転換期がいつになるかは別として、その状況は私たち一般庶民が宇宙に出かけられるようになった時だ。20世紀後半、人類は初めて宇宙に飛び立ち、21世紀にはより多くの人間がそれを実現するわけだが、しかしまだそれは訓練を積んだ専門家や大富豪など特権を得た少数者に限られる。

 22世紀後半ともなると、ようやく宇宙旅行が身近になり、私たちが普段飛行機に乗るような感覚で、誰もが気軽に宇宙に旅立つことが出来るようになるかもしれない。そうして私たちは直に、この丸いちっぽけな、しかし、かけがえのない青く美しい地球を外から眺めるのである。

 大気圏外の宇宙から地球を眺める。その時、多くの人たちの意識が変わることは間違いなく、人類史の真の変革はその体験を通して始まるだろう。

 ちっぽけな丸い地球を遠く宇宙から多くの人々が俯瞰した時、国同士の争いや人種や宗教間のイザコザなど、それらがどんなにアホらしいことだったかを人類は理解する。そして、地球全体が私たちの故郷であることを自覚するのだ。